2011年6月19日(日)「中国新聞」地域発 活字の世界欄/2011年6月6日(月)「朝日新聞」広島欄で著者と本が紹介されました。

原爆を伝える子どもの文学
原爆を伝える子どもの文学
A5判・560頁・上製本・定価 本体4,800+税 円
ISBN978-4-86327-142-5 C1095/2011年5月20日発行



7人の作家による25の作品の「内容」を広く引用掲載。「あらすじ」「まとめ」でこまかに解説。時代背景にも触れ、原爆児童文学がなげかけるメッセージに耳を傾ける。
   著者紹介
阿部真人(あべ まさと)

島根県奥出雲町出身。1956年(昭31)3月、広島大学大学院文学研究科(修士)修了。広島大学教育学部附属東雲中学校教諭、広島大学助教授等を経て、1995年(平7)3月、愛媛大学教授を退官。広島市在住。

阿部雅子(あべ まさこ)

静岡県浜松市出身。1960年(昭35)3月、東京女子大学日本文学科卒業。日清紡績松栄高等学院、大下学園教諭を経る。広島市在住。

   まえがき抜粋

(略)1962年(昭38)七月、『つるのとぶ日』(東都書房)が広島の「子どもの家」同人の手によって刊行された。その出現の遅きを、菅忠道氏は「日本の児童文学の非力」と指摘している(本書7ページ)が、 今西祐行・いぬいとみこらの小品を除くと、まとまったものとしては初めての原爆児童文学の作品集であった。同人は被爆体験が風化しつつある現状に危機感を抱き、 まず自己の被爆体験を形象化することから始めた。それは広島という地域に根ざした土着性の濃いものであったが、当然のように体験の普遍化・思想化を目指したものとなっていった。 (略)原爆児童文学は、亡くなっていった人々への鎮魂歌であるとともに、次代を生きる子どもたちへの応援歌ともなっていった。

   本書 「第一部 創作」三、反響と反省 p.33,35抜粋

 ヒロシマの心を伝えるために、作者たちはまず、ヒロシマの惨禍を事実として表現しようとしている。「ほんとうにあったこと。忘れてはならないこと。 二度とあってはならないこと。」(『つるのとぶ日』あとがき)として、とらえているのだ。(紹介した作品以外のものも様々な角度から、原爆の残酷さを浮き彫りにしようと試みている。 これらの表現活動を通して顕著なのは、先にも指摘したように、使者の代弁者としての作者の姿勢である。そしてそこには原爆投下に対するいきどおり、告発があった。 しかし、それは復讐に向うべきものではなく、恒久平和へと指向するものであった。『つるのとぶ日』は、死者への鎮魂曲であり、生き残った者への応援歌であるとともに、 全人類への平和のメッセージであった。)

 『つるのとぶ日』は、刊行と同時に反響を呼び、多くの新聞、雑誌等に取り上げられた。「原爆は児童文学たりうるか。」という原爆児童文学にとっての根本的な問題に始まり、 「リアリズムの方法の確立」という日本児童文学全体への問題提起に及ぶまで、それは幅広いものであった。「子どもの家」同人十余名は、これらの批判、問題提起を受けとめて、 今後どのように取り組むべきかを話し合った。そして、その結果を中間発表の形として、大野允子、山口勇子、宮本泰子の三氏が、それぞれ〈小感〉の形でまとめ、「日本児童文学」 (1964・8)に発表している。

 (略)

 「被爆の体験を、ヒロシマの惨禍を風化させてはならない、という危機感にも似た思いに支えられて書いていった」と、同人たちは語っている。しかし、 『つるのとぶ日』に寄せられた多くの批判に接して、同人たちは反省をせまられ、不安をかくすことができなかった。これを救ってくれたのが、全国の子どもたちとその母親の反応であった。 自分たちの踏み出した方法だけは正しかったと同人たちは自信を深めたようだ。さいわいヒロシマに住む者の強味を生かして、題材はいくらでも発掘できた。同人たちは被爆体験(直接・間接) の継承という原点に立ち返り、『つるのとぶ日』刊行を新たな出発点として、さまざまな方向へ書き進めていくことになる。平和の内容も、差別・人権・飢餓・貧困・地域紛争・正義・公害・ 地球環境といった方向へ視点が広げられていった。

   目 次
 まえがき
		            
第一部 創 作

1 『つるのとぶ日 ヒロシマの童話』(子どもの家・同人)の誕生
 一、成立事情
 二、収録作品の紹介
 1、被爆当日のことを中心とした作品
   「川のほとり」/「夜のくすの木」/「雪のふる日のこと」
 2、後遺症をめぐる作品
  「グリーンの車」/「カッパは死んだ」
 3、原爆被災地に不死鳥のようにたちあがる人々の姿をえがいた作品
   「三郎のきょうのできごと」/「洋子の旗」/「つるのとぶ日」
 三、反響と反省

2 大野允子の世界
1 『海に立つにじ ある広島の少女の物語』
 一、あらすじ
 二、内容
 1、被爆の悲惨さの描写
 2、「にじ」の象徴しているもの
 三、まとめ
 1、被爆を戦争との関わりの中で
 2、現代の読者と重ね合わせて
 3、これからの道
2 『ヒロシマの少女』と『見えないトゲ』
A『ヒロシマの少女』
 一、あらすじ
 二、内容
 1、原爆の悲惨さと生き残った人たち
 2、焼きつくせなかった部落差別
 3、家族への愛
 三、まとめ
B『見えないトゲ』
 一、あらすじ
 二、内容
 1、フサコを通しての発見
 2、フサコの家族を通しての発見
 3、タモツを通しての発見
 三、まとめ
3 『夕焼けの記憶』
 一、あらすじ
 二、内容
 1、「ある少女の像」の絵について
 2、夕焼けの記憶とは
 三、まとめ
4 『げんさん』と『まめたんばあさん』
 一、あらすじ・内容
 二、まとめ
5 『虹をみた日 ヒロシマ、少女あきの物語』
 一、あらすじ
 二、内容
 1、シマ子さんを通しての発見
 2、道子さんを通しての発見
 三、まとめ

3 山口勇子の世界
1 『スカーフは青だ』
 一、あらすじ
 二、内容
 1、行動する子どもたち
 2、原爆にめざめる子どもたち
 三、まとめ
2 『かあさんの野菊』『おこりじぞう』
 一、あらすじ・内容
 二、まとめ

4 竹田まゆみの世界
1 『あしたへげんまん』
 一、あらすじ
 二、内容
 1、「戦争」という名の汽車
 2、汽車はとまった
 三、まとめ
2 『ガラスびんの夏』
 一、あらすじ
 二、内容
 1、おじいちゃんと原爆
 2、良太とおじいちゃん
 3、おじいちゃん逝く
 三、まとめ
3 『るいるいと るいるいと~~~1945・8・6 広島の川~~~』
 一、あらすじ・内容
 1、カツトシの名は勝利
 2、みどりが歩いた
 3、つめたい麦茶
 4、こっくりさんは左に
 5、松葉杖とダリヤ
 二、まとめ

5 その他の作品
1 『二年2組はヒヨコのクラス』山下夕美子
 一、あらすじ・内容
  「だけど数学はきらいだ*山下和雄の話*」
「ひろしまのオデット*三木久美子の話*」
  「あおい車*福本道子の話*」
 二、まとめ
2 『青葉学園物語』シリーズ 吉本直志郎
 一、あらすじ・内容
  「すばらしい一日」(『飛ぶんだったら、いま!』より)
  「精霊流し」(『まっちくれ、涙』より)
 二、まとめ
3 『1983年 熱い秋のノート』中澤晶子
 一、あらすじ
 二、内容
 1、ふたつのなぞ
 2、パパの変革
 三、まとめ

第二部 ノンフィクション

1 大野允子の五部作
 一、概観
 二、内容
 1、『ひーちゃんは いった――広島の少女たちの遺書――』
 2、『八月の少女たち――ヒロシマ・1945』
 3、『あなたへ[1945年ヒロシマ・8月6日のない日記]』と『ミナのあした』
 4、『夏服の少女たち――広島・昭和20年8月6日――』
 三、まとめ
2 『いしぶみ(碑)』広島テレビ放送編
 一、概観
 二、内容
 三、まとめ
3 『折り鶴の子どもたち 原爆症とたたかった佐々木禎子と級友たち』那須正幹
 一、概観
 二、内容
 三、まとめ
4 『かあさんと呼べた日』山口勇子
 一、概観
 二、内容
 1、国内精神養子運動の立ちあげ
 2、精神養子運動の展開
 3、「あゆみグループ」の成立
 三、まとめ
 1、11年間の回顧
 2、精神養子たちのその後
 3、「再び原爆孤児をつくるな」の叫び

作品本文の引用について
本文の注解説
考察作品の作者紹介

あとがき
長かったヒロシマへの道のり【阿部真人】
芝生の下【阿部雅子】